抗癌剤の混合調製における危険性の認知

公開日: 2015年12月04日
著者: yakujiman
Yakujiman
プロフィール
  • yakujiman
  • 製薬会社の学術関連部門・薬事関連部門にて、製品の学術資料・パンフレットの作成、通知・通達のチェックと情報収集、添付文書・製品表示の原稿作成、製品広告のチェック等の仕事をしてきました薬剤師です。関連する業界の情報等を集め、管理薬剤師のためのマニュアル等の作成も行ってきました。今まで携わっていた製品は、医療用医薬品・一般用医薬品の他にも、医薬部外品・化粧品、サプリメント、衛生雑貨、試薬といった幅広い分野に渡っています。
抗癌剤の多くは注射剤であり、一般の薬と同様に患者に投与する際に溶解液に溶かしたり、輸液に混合したりするといった作業が必要になります。しかし、抗癌剤の危険性については、欧米で早くからその危険性が指摘されています。

リスクにより分類される抗癌剤の取扱上の注意度

抗癌剤は、その作用機序からして細胞毒性をもっています。このため抗癌剤の注射剤を調製しているときに被ばくした場合、腫瘍細胞を殺す作用が細胞毒性となって正常な細胞も攻撃することになります。量的にはごくわずかですが、欧米では早くからその危険性が指摘されていて、日本でも危険性を最小限にするための処置がいろいろと取られています。実際に、抗癌剤の混合調製を行っていたときに、頭がふらふらしたり、めまいがしたり、頭痛や顔面紅潮が起こったという事例もあります。日本病院薬剤師会では、抗悪性腫瘍剤の院内取扱い指針「抗がん薬調製マニュアル」において、抗癌剤の取扱いについて、取扱上の注意度をⅠ~Ⅳの4段階に分類しています。Ⅰは一番リスクが高いもので、毒薬指定になっていたり、ヒトで実際に催奇形性や発癌性が報告されていたりするものなどが該当し、Ⅱは動物において催奇形性や発癌性が報告されているものなどが該当します。Ⅲは変異原性・催奇形性・胎児毒性・発癌性が極めて低いか認められていないもの、Ⅳは検証されていないため結果が示されていないものとして分類されています。アルキル化剤や5FUをはじめとする多くの代謝拮抗剤、白金系抗悪性腫瘍剤、タキソイド系悪性腫瘍剤、ビンカアルカロイド系抗悪性腫瘍剤がリスクが高いⅠに分類されていて、それ以外にも多くの薬剤がⅠに分類されています。

抗癌剤の調製での被ばくポイントと留意点

抗癌剤の混合調製で最も被ばくしやすいのが、凍結乾燥粉末となっている製剤に溶解液を入れ、溶解した後それを抜き取る操作をしている時です。抗癌剤の混合調製は、注射剤であるため無菌操作に注意しながら、かつ被ばくにも注意して行う必要があります。万一の飛散による被ばくに備えてシリンジは注射針が用意にはずれないロック型のものを使い、取り出す液量よりも多いものを選択します。そしてバイアルへの針の刺入部をガーゼで覆い、陰圧を保ちながら溶解液を取るのがポイントです。ゴム手袋は二重にするのが望ましいでしょう。陰圧かどうかは、バイアルを倒立させゴム栓を下向きにした状態で溶解液を含んだシリンジを入れてから正立させます。このときシリンジのプランジャーが溶解液の自然滴下とともに下がってくるのであれば、バイアル内は陰圧になっています。プランジャーが下降しないときに溶解液を入れていくとバイアル内は陽圧状態になってしまいます。この場合は一定量の空気をバイアルからシリンジに移行させ、それと同量の溶解液を慎重に入れていくといったことを繰り返していきます。最近ではバイアルやシリンジの内圧が高くなることを防止してエアロゾルの飛散を防ぐファシールシステムやケモセーフセットというような器具も販売されています。
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