授乳婦への服薬指導で留意する点

公開日: 2015年12月18日
著者: yakujiman
Yakujiman
プロフィール
  • yakujiman
  • 製薬会社の学術関連部門・薬事関連部門にて、製品の学術資料・パンフレットの作成、通知・通達のチェックと情報収集、添付文書・製品表示の原稿作成、製品広告のチェック等の仕事をしてきました薬剤師です。関連する業界の情報等を集め、管理薬剤師のためのマニュアル等の作成も行ってきました。今まで携わっていた製品は、医療用医薬品・一般用医薬品の他にも、医薬部外品・化粧品、サプリメント、衛生雑貨、試薬といった幅広い分野に渡っています。
女性の場合、妊娠の時とともに薬の服用に気を使わなければならない時期に、授乳期があります。授乳婦の薬物治療においては、母体の生理的変化のみならず、乳児への影響も考えなければなりません。特に乳児への影響については、薬によっては授乳を避けるといった選択肢もでてきます。

授乳婦に服薬指導するときに注意したいポイント

本来ヒトをはじめとする哺乳類は母乳で子育てしますが、その母乳は最良の栄養源となっています。母乳は、牛乳などと違って異種蛋白を含んでいないためアレルギーを起こす可能性が非常に少なくなっているだけでなく、特に出産直後の初乳は免疫物質が多く含まれていて乳児をいろいろな感染から予防してくれる働きがあります。母乳は、乳児にとって栄養源であるばかりでなく免疫面でも重要な役割を果たしています。また原因不明で突然赤ちゃんが亡くなってしまう乳幼児突然死症候群のリスクは母乳育児のほうが少ないことがわかっていますし、乳児は母乳を飲むという筋力がいる作業をすることで、顎の筋肉が発達し、脳の発達にも影響してきます。母乳育児のメリットは、乳児だけでなく母親にもあります。授乳により乳汁分泌ホルモンであるプロラクチンが分泌することで母性が深まるとともに、授乳は子宮収縮作用につながるといわれていて、産後の体の回復が助けられます。赤ちゃんが泣いたときもすぐ母乳を与えることができますし、経済的にも人工乳だとお金がかかってしまいます。授乳婦の場合は、母乳育児のこうしたメリットを考えて、薬を選択する必要があります。自分の子供はなるべく母乳で育てたいというのは人間の感情で、薬を飲んでも単に授乳を避けて人工乳を与えておけばいいじゃないかという問題ではありません。

授乳婦の生理と薬を投与するにあたってのリスク

薬の中には、服用すると母乳中へ移行するものがあります。乳児は1日に600mL~1Lの母乳を飲むと言われていますので、乳児への影響がでてくる可能性も十分に考えられます。母乳中に移行しやすい薬としては、分子量が200以下、脂溶性の薬物、弱塩基性の薬があります。乳汁中は多くの脂質があることから脂溶性のものは乳汁中の濃度が高くなりやすく、また乳汁のpHは約7で、血漿のpH7.4よりも低いことから、弱塩基性の薬がより移行しやすくなっています。授乳婦の場合は、基本的には母体の疾患が悪影響を及ぼすと考えられる場合を除き、原則として薬物療法は控えるべきで、母体の血中濃度と母乳中濃度を比較することで、乳児への影響を検討することができます。特に新生児の場合は、薬物代謝能力や排泄能が低いので、より注意が必要になってきます。添付文書で授乳婦禁忌となっているものはたくさんありますが、代表的なものとしては、シクロホスファミド、アセブトール、フェノバルビタール、炭酸リチウム、サルファ剤、インドメタシン、アスピリン、サルチル酸系製剤、モルヒネ塩酸塩、クレマスチンフマル酸塩、アルコールなどがあります。シクロホスファミドやシクロスポリン、メトトレキサートなどは、乳児の細胞代謝が阻害され、免疫抑制や好中球減少を起こす可能性があります。大部分の精神病薬は、乳児に与える影響は未知ですが、母乳中に移行し中枢神経系の機能を変化させる可能性があります。
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