iPS細胞が応用される再生医療の臨床研究

公開日: 2016年03月14日
著者: yakujiman
Yakujiman
プロフィール
  • yakujiman
  • 製薬会社の学術関連部門・薬事関連部門にて、製品の学術資料・パンフレットの作成、通知・通達のチェックと情報収集、添付文書・製品表示の原稿作成、製品広告のチェック等の仕事をしてきました薬剤師です。関連する業界の情報等を集め、管理薬剤師のためのマニュアル等の作成も行ってきました。今まで携わっていた製品は、医療用医薬品・一般用医薬品の他にも、医薬部外品・化粧品、サプリメント、衛生雑貨、試薬といった幅広い分野に渡っています。
つい最近までは、ヒトのどんな組織にも分化できる細胞、すなわち万能細胞としてはES細胞(胚性幹細胞)が知られていました。ES細胞は、胚の一部から作られる組織に分化する前の細胞であることから、理論上はどんな組織にもなることができるとされ、無限に増やすこともできます。再生医療への応用が期待されていましたが、受精卵から取り出すために倫理的な問題や、他人の受精卵を用いることから起こり得る拒絶反応等が懸念されていました。

iPS細胞の発見とES細胞にはないメリット

そんな中、京都大学の山中伸弥教授が世界で初めて成功し、ノーベル医学生理学賞を受賞することとなったのが、iPS細胞(人工多能性幹細胞)です。iPS細胞は、ES細胞とは違い、すでに分化しきっていて他の細胞へと変化する能力がない細胞に対して、4つの遺伝子を注入するとES細胞とよく似た細胞ができるということで発見されました。つまり既に分化してしまっている細胞の遺伝子を特殊な条件下におくとリセットされて未分化な条件にもどるというものです。ES細胞だけに発現している遺伝子として24個の遺伝子があげられ、この中に遺伝子をリセットするものがないか研究が続けられ、24個の遺伝子から1個ずつなくしていって、リセットできなくなる遺伝子を見つけていく研究が行われ、最終的にc-Myc、Oct3/4、Sox2、Klf4という4つの遺伝子でリセットできることが確認されました。iPS細胞の発見により、患者自身の体細胞から作れることからES細胞の研究でネックになっていた倫理的な問題がクリアされたばかりか、自分自身の細胞ということから拒絶反応の問題もクリアされました。

進んでいくiPS細胞を使った臨床研究

iPS細胞を発見し、ノーベル賞を受賞した山中教授ですが、「本番はこれから」と言われているように、iPS細胞をいかに再生医療に結びつけていくかということが一番大切なことになります。2014年には、世界で初めての臨床研究が加齢黄斑変性に対して理化学研究所等で行われています。患者の皮膚から得た細胞からiPS細胞をつくり、網膜の細胞を作っておいて、悪くなった患者の網膜から細胞を取り除き、そこの部分にiPS細胞から作った細胞を入れていくというものです。山中教授らの活躍もあって、日本は世界の中でもiPS細胞による臨床研究の分野では一歩リードしている形ですが、今後、癌のリスクなどさらなる安全性の検討の他に、治療にかかる時間や費用の改善といった課題もあります。またiPS細胞研究所では、あらかじめ拒絶反応をおこしにくいタイプの人の細胞からiPS細胞を作るといったプロジェクトも進められています。現在、加齢黄斑変性以外にも、パーキンソン病の患者の脳神経再生、脊髄損傷患者への治療、シート状になった心筋細胞の張り付けといった心筋梗塞の治療への応用が検討されているほか、や血液などを対象にした研究、肝臓や腎臓の細胞を対象にした研究などが進められています。
このエントリーをはてなブックマークに追加
Crown 転職サイト比較 ランキング