新型ノロウイルスに関連した腸内細菌の研究

公開日: 2016年02月24日
著者: yakujiman
Yakujiman
プロフィール
  • yakujiman
  • 製薬会社の学術関連部門・薬事関連部門にて、製品の学術資料・パンフレットの作成、通知・通達のチェックと情報収集、添付文書・製品表示の原稿作成、製品広告のチェック等の仕事をしてきました薬剤師です。関連する業界の情報等を集め、管理薬剤師のためのマニュアル等の作成も行ってきました。今まで携わっていた製品は、医療用医薬品・一般用医薬品の他にも、医薬部外品・化粧品、サプリメント、衛生雑貨、試薬といった幅広い分野に渡っています。
ノロウイルスは、感染性胃腸炎を引き起こすウイルスとして知られていますが、感染して発症すると、急にお腹がチクチク痛みだし、それがこみ上げるような痛みになっていき、お腹の不快感となったり、1日に何度も吐く強力な吐き気を催したりするという症状が出てきます。吐き気がおさまると今度は水様便となり下痢が続いたりします。免疫力が強い人は、感染しても発症しなかったり、症状が出てもごく軽い風邪のような症状だけで終わってしまう人もいますが、特に免疫力が弱い乳幼児や高齢者では症状が重くなり長引くこともあります。

新型ノロウイルスが恐れられている理由とは

ノロウイルスは、常に変化をしていて、今まではGⅡ4型のものが流行していましたが、2014年3月に川崎市健康安全研究所でGⅡ17型の新型ノロウイルスが発見されました。この新型ノロウイルスは、川崎で初めて発見されたことから川崎変異株とも言われています。GⅡ17型への変異は、自動車のフルモデルチェンジに近い感じで、同じノロウイルスという名前ですが、形もエンジンも違うというぐらい大幅な変異になっています。従来のノロウイルスと違い、ヒトが免疫を持ってないタイプになっていることから、大流行する可能性があるということで恐れられています。またノロウイルスはエンベロープという脂質の膜を持っておらず、消毒剤や除菌剤、環境の変化にも比較的強くなっています。対策として消毒薬としては、次亜塩素酸が用いられます。

新型ノロウイルス対策として期待される腸内細菌SENG-6

ノロウイルスの特徴として、ヒトの血液型決定抗原に吸着することが知られています。これはヒトの血液型を決定する多糖のことですが、私たちの腸内にいるSENG-6(Enterobacter sp.)という腸内細菌株が、血液型決定抗原のような物質を細胞外に分泌していることがわかり、そこにノロウイルスが強く吸着されることがわかりました。条件がそろっていれば、細菌1つで1万個以上のウイルスを吸着し、細菌ごと除去することもできるとされています。もし、腸内細菌SENG-6にノロウイルスを吸着させることができれば、本来腸内の細胞と反応するノロウイルスを吸着することで、感染を抑える可能性があると言われています。ノロウイルスは、人の腸内のみで増殖するという特徴があるため、実験室レベルで増殖させることが難しく、ワクチンや薬の開発の障害になっています。現時点でノロウイルスに対するワクチンも有効な抗ウイルス薬もない状況で、腸内細菌SENG-6への期待が高まっています。また下水処理場でも腸内細菌SENG-6によりノロウイルスを吸着させてからろ過するという技術の研究も行われています。
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