感染症の問題と今後の薬剤師の役割について

公開日: 2016年04月08日
著者: yakujiman
Yakujiman
プロフィール
  • yakujiman
  • 製薬会社の学術関連部門・薬事関連部門にて、製品の学術資料・パンフレットの作成、通知・通達のチェックと情報収集、添付文書・製品表示の原稿作成、製品広告のチェック等の仕事をしてきました薬剤師です。関連する業界の情報等を集め、管理薬剤師のためのマニュアル等の作成も行ってきました。今まで携わっていた製品は、医療用医薬品・一般用医薬品の他にも、医薬部外品・化粧品、サプリメント、衛生雑貨、試薬といった幅広い分野に渡っています。
医療の進歩とともに、多くの疾患に対する治療法が確立されてきていますが、感染症に対しては逆にいろいろな問題がでてきています。グローバル化により感染が拡がりやすくなっていることに加え、地球温暖化等も影響し、近年でも韓国で問題となったMARS(中東呼吸器症候群)、エボラ出血熱、デング熱などの感染症が話題になりました。さらには、MASA(メチシリン耐性黄色ブドウ球菌)をはじめとする各種薬剤耐性菌の増加の問題などが起こってきています。

感染症をマネジメントする組織の中の薬剤師

感染症に対しては、医療機関では、感染症対策、特に院内感染に対してICC(院内感染対策委員会:Infection Control Committee)を組織し、診療部門、看護部門、薬剤部門、臨床検査部門、事務部門などの代表者を選出し、院内感染対策を検討して、組織的な対応方針を決め、指示・教育を行うなどの対策をとっています。また院内感染対策マニュアルを作成・整備し、検体からの薬剤耐性菌の検出情報など逐次情報共有できるような体制をとっています。さらにICT(感染制御チーム:Infection Control Team)が組織され、医師や看護師、薬剤師をはじめ、臨床検査技師や栄養士などの組織横断的メンバーによって感染症を抑えたり、感染症診療のシステム化を図ったりする取り組みがなされています。このICTの中でも薬剤師の果たす役割は大きく、薬剤の専門家として、抗菌薬適正使用ガイドライン、プロトコール作成、TDMの実施、抗菌薬治療に関する最新情報の提供等の役割が期待されています。イギリスでは、各病院に少なくとも1名、感染症専門の薬剤師が配置されていて、感染症専門医とともに抗菌薬の投与方針の決定や鑑査、アドバイス等を担当しています。日本でも薬剤師は、抗菌薬や消毒薬の管理・指導においてエビデンスに基づく抗菌薬の投与や使用量のコントロール、ワクチンの管理などの役割が期待されていて、日本病院薬剤師会では、専門薬剤師制度の中で、感染制御専門薬剤師を定めています。

感染制御専門薬剤師への役割と期待

感染制御専門薬剤師は、日本病院薬剤師会が認定しているもので、消毒薬や微生物、耐性菌、感染症疾患の特徴、抗菌剤などの薬の薬理作用や体内動態といった感染制御に必要な基礎知識を十分に理解するとともに、エビデンスに基づく感染対策を十分に理解していることが必要とされます。特に抗菌薬を適切に使用するためのPK/PD理論を理解していることが大切です。PK/PD理論とは、薬物動態/薬力学のことで、薬物動態を加味した上で、抗菌薬の作用や副作用を考えていく概念・理論です。PK/PD理論の中では、薬物動態を理解した上で、耐性菌の出現を阻止できる濃度(MPC)や耐性菌を選択的に残してしまう可能性の高い濃度閾(MSW)などを考慮するなどの専門的な知識が必要となってきます。これからは、抗菌剤の特徴を総合的に判断して、適正使用をサポートし、菌の耐性化を抑えていく専門知識がますます薬剤師に求められていくことになるでしょう。日本病院薬剤師会が認定する感染制御専門薬剤師以外では、日本化学療法学会が制定している抗菌化学療法認定薬剤師があります。
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