日本の医薬品開発力を弱める治験の空洞化

公開日: 2015年02月20日
著者: yakujiman
Yakujiman
プロフィール
  • yakujiman
  • 製薬会社の学術関連部門・薬事関連部門にて、製品の学術資料・パンフレットの作成、通知・通達のチェックと情報収集、添付文書・製品表示の原稿作成、製品広告のチェック等の仕事をしてきました薬剤師です。関連する業界の情報等を集め、管理薬剤師のためのマニュアル等の作成も行ってきました。今まで携わっていた製品は、医療用医薬品・一般用医薬品の他にも、医薬部外品・化粧品、サプリメント、衛生雑貨、試薬といった幅広い分野に渡っています。
治験の空洞化は、日本の製薬メーカーがコストやスピードの面で良好な治験環境が整っている海外で医薬品の治験を行うようになり、日本での治験実施能力が低下し欧米に大きく遅れをとってしまっている状況のことを言います。

いろいろな面で遅れをとっている日本の治験

平成9年に新GCP基準と言われる医薬品の臨床試験の実施に関する省令が制定され、日米欧3極で国際的基準に合わせていくという方向性になりました。そこでは、被験者の同意取得に文書が必要になったことや、治験の適正評価のため第三者の鑑査担当者を設置するなどの規則が盛り込まれました。その結果、被験者の確保が難しくなり治験開始が遅れるという問題も出てきました。さらに省令が変わったことでその体制について対応できない医療機関も出てきました。コスト面でも治験実施費用が高い日本ですが、さらに海外では、治験コーディネーター(CRC)、治験施設支援機関(SMO)、医薬品開発業務受託機関(CRO)といった臨床試験の基盤が整備され良好な治験環境が整っていることもあり、日本の製薬メーカーはどんどん治験を海外で先行していくケースが増えてきました。一方、外資系メーカーの日本進出が目立ってきていますが、海外で治験を実施し、どんどん日本国内に新薬を持ち込んできています。日本市場においても欧米メーカーの市場シェアが伸びてきています。これは日本の医薬品開発力を弱め、医薬品産業育成を阻害する大きな問題となっています。


現在行われている治験の空洞化に対する対策

日本政府も治験の空洞化に対して対策に乗り出しています。文部科学省と厚生労働省は平成24年に「臨床研究・治験活性化5か年計画2012」を策定しています。治験ネットワークにおいてコア病院をつくり、症例集積性を高めるようにする方針で、具体的には、病床数が400~500床程度の3~5の医療機関があたかも1医療機関のように機能できるような体制を構築しています。さらにその活動状況をネット上に公開するなどしています。また、日本の治験の質を上げるためにも治験コーディネーター(CRC)の養成確保等が行われ医療機関の治験実施体制の充実が図られています。5か年計画では、症例集積性の向上、治験・臨床研究の効率化、研究者の育成、治験・臨床研究の実施に必要な人材の確保、治験・臨床研究の情報公開、治験にかかるコスト・スピード・質の適正化を課題として、ドラッグラグを改善するとともに、治験の空洞化対策が行われています。具体的には、毎年治験・臨床研究基盤整備状況調査を実施し、体制整備の進捗を評価するとともに、CRCの養成、研修、国民への普及啓発活動、臨床研究への参加支援に力を入れているところです。
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